先回の第7弾に続きまして
(第7弾はこちら⇒白血病闘病記第7弾!骨髄検査編)
今回は第8弾、『最大の苦悩編』です。
それではどうぞ。
2014年 2月上旬~中旬
ここまでの経過は順調でした。
先回の骨髄検査の結果も良好で、
『寛解(かんかい)』というものになっていました。
『寛解』とは、まぁ簡単にいってしまいますと、
一時的に症状が軽減したり、
消滅したりしている状態のことをいいます。
ちなみにこの最初の抗がん剤投与で
寛解状態になることは理想な展開との話でした。
ただ、あくまで一時的なわけで、
再発の可能性が高いわけです。
当然、予定通り引き続きの治療が必要になってきます。
と、いうわけで、
2月の頭からは2回目の抗がん剤投与が始まりました。
一回目の抗がん剤投与を『寛解導入療法』といい、
寛解状態に入ったら、今度は
『地固め療法 』というものになるという話でしたが、
まぁ結局のところ抗がん剤治療です(笑)
薬の種類や量も少し変わっていたようですが、
私にとってはどちらも大差はありませんでした。
2回目の抗がん剤治療も初回と同じような感じで、
発熱や食欲不振などはありますが、
やはり吐き気止めが強力なせいか、
耐えられないほどではなかったです。
そんな具合で順調に治療が進んでいたある日、
岸先生と看護師さん2名ほどが
ちょっと重たそうな雰囲気で私の病室に入ってきました。
たった3名ですが、
それこそ骨髄検査でもないかぎり、
普通であれば3名が同時に入室することなんてありえません。
しかも3名とも笑顔が見られません。
明らかにいつもと違う雰囲気です。
私はそこで、若干の不安を覚えました。
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人生の選択
先生と看護師さんが椅子に腰をかけ、
看護師さんは何やら記録用紙を持っています。
先生が口を開きます。
『今日はね、骨髄移植の話をしたくてきたんだよね』
が最初の一言でした。
それから今の私の年齢で骨髄移植をすれば、
高い確率で治すことができるという話しをしてくれました。
骨髄移植をしなくても、治る人はいるけど、
完治というレベルに達する人は全体の30%ほどで、
残りの70%くらいは再発してしまうそうです。
それに私の場合、
発見時の白血球の数が6万と多く、
普通よりは再発リスクが高いとのことでした。
他にも細かい理由がありましたが、
やはり『6万』という数字が決めてとなっているようでしたね。
また、先生は教科書というか、
骨髄移植のパンフレットも持っていて、
それを私に見せながら詳しく話してくれました。
そこには移植をすることによる効果や
それに伴う副作用が書かれていました。
まぁいろんな副作用があるようでしたが、
はじめて見た時の印象としては、
『抗がん剤治療と大差ないじゃん』って感じでしたね。
正直な話、私は移植なんてしなくても、
抗がん剤で治ると思っていました(笑)
なので、ちょっとした残念感のようなものはありましたが、
『あーやっぱりそんなに甘くないかぁ(苦笑)』
と軽く受け止めていました。
しかし、パンフレットを読み進めていくと
副作用のところにとんでもない文字が載っていました。
それは。。。
『不妊』
でした。
その字を見た瞬間、急に凍り付きました。
ゾッとしました。
私は先生に
『え?これ、どうゆうことですか?』
と問いかけました。
先生からは
『うん、骨髄移植をする前に放射線治療があるんだけど、
どうしてもその影響で精子が作られなくなったり、
弱くなったりして、男性の場合は
ほぼ間違いなく不妊になってしまうんだよね』
と回答がありました。
この話を聞くまでは、
『まぁ治るんだったら移植した方がいいんだろうな~』
くらいに思っていました。
でも、不妊の話が出た瞬間、
移植に対して大きな大きな壁が現れました。
私の彼女は子供がとても好きで、
いつも『こどもがほしいー』と言っていました。
一応、移植前に精子保存はできるとのことでしたが、
自然妊娠はほぼ絶望的になります。
先生は
『すぐに決める必要はない』と言ってくれたので、
しばらく、考えることにしました。
まさに人生を左右する選択を迫られることになりました。
私と彼女
第1弾、第2弾以来、
文章の都合上あまり彼女が登場してきませんでしたが、
このあたりでお話ししておこうかと思います。
実は、この間にたくさんのケンカをしてしまってました。
彼女も大きな不安はあるだろうし、
ストレスだって尋常なかったと思います。
イライラしてしまったり、
憤りを覚えてしまっても当然です。
彼女は休日のたびに、
なんなら早番の仕事終わりにも
お見舞いにきてくれましたが、
かなりの確率でケンカをしてしまっていました。
私に彼女のすべてを受け入れることができる器量が
あれば良かったのですが、
当時の私にそこまでのものはありませんでした。
『自分は彼女に捨てられるかもしれない』
そんなことを思ったりもしました。
だって、私は白血病の患者です。
将来だってどうなるかわかりません。
彼女は若いし、いくらでも相手なんて見つけられます。
でも、それでも、
彼女が私を捨てることはありませんでした。
本当にありがたいです。
ただ、今回だけは、今回ばかりは
『さすがに捨てられるかも。。。』とも思いました。
さきほどお話ししましたが、
私が入院する前から彼女は
『こどもがほしいー』とずっと言っていました。
一応、精子保存はできるので、人口受精は可能ですが、
やはり理想は自然妊娠です。
彼女に骨髄移植の話をするのは、
かなり心が痛みますが、
伝えないわけにもいきません。
彼女には正直に電話で伝えました。
もちろん精子保存の話もしましたが、
やはりかなり悩み、悲しんでいる様子でした。
私の彼女はもともと口数が多い方ではありません。
でもこの時ばかりは口数がさらに減って、
ほとんど会話ができませんでした。
しかもこの時、
彼女の友人の妊娠が発覚して、
彼女的にはかなり複雑な心境になってしまっていたようでした。
そんな状態なので、
もう彼女のフラストレーションはMAXです。
そうなってくると。。。
やはりケンカまでに発展してしまいます。
もっともっと私に器量があれば良かったのですが、
私自身にそのような余裕もなく、
彼女の気持ちを受けて止めてあげることができませんでした。
私は白血病なうえに、
治ったとしても不妊になり、
自然妊娠ができなくなる可能性が高い。
そんな状態に加え、ケンカまでしてしまっています。
振られる理由としては十分過ぎます。
でも、それでも、彼女は私を見捨てませんでした。
数日間のケンカをした後、
彼女からのメールが届きました。
そこには長文で、
彼女の気持ちと反省が書かれていました。
自然妊娠をしたい気持ちはあるけど、
もちろん私に治ってほしい気持ちもあるということ、
そして私に対する謝罪の言葉が綴ってありました。
私は嬉しく、ありがたい気持ちになりました。
まさに感謝の気持ちでいっぱいになりました。
私は思わず電話をかけました。
すると、今から病室に来るというのです。
三条からこの病院まで、40分くらいはかかるので、
しばらく待つことにしました。
が、しかし!!
彼女はたった5分で病室までやってきました(笑)
なんと彼女はずっと前から駐車場にいて、
そこでメールを打っていたというのです。
彼女からのちょっとしたサプライズでした。
自然妊娠ができなくなるかもしれない切なさと、
己の不甲斐なさ、
でもここに彼女が来てくれたことの
嬉しさと感謝、そんなものが入り混じっていました。
病室で二人で抱き合いながら涙を流しました。
そして数日後、
私たちは骨髄移植を受けることを決めました。
さて、第8弾はここまでにしたいと思います。
続きの第9弾はこちらからどうぞ。
⇒白血病の闘病記第9弾!素晴らしいスタッフ編